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2007 03,04 21:39 |
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こんばんは、佐野倉 恵壬です。
今日で合宿も折り返しとなります。 合宿そのものは花桜梨さんと涼ちゃんを中心に、みんな一生懸命練習に励んでいます。 個人的なスキルはみんな上がってきているんじゃないかな、とは思っています。 でも、未だにフォーメーションが決まりません。 何しろここに来て、3バックにするか4バックにするか、全く決まっていない状態なんですから。 そこで、今日こそは花桜梨さんや涼ちゃんと一緒にフォーメーションを考えようとしているのですが… 実は夜になると、花桜梨さんも涼ちゃんもどこかに消えてしまうのです。 昨日はどうしたものだか相談しようと北見監督のところに行ったのですが、その北見監督の姿もありません。 私とちひろさん、詩織さん、鞠川さんはとにかく3人を探そうと言うことになりました。 その矢先、突然別の方から大きな声が聞こえてきました。 「優飛! 優飛! どこに行ったの?」 バドミントン部コーチの鬼頭美華コーチが優飛ちゃんを探しているみたいです。 「どうしたんですか?」 私が聞くと、美華コーチは真っ青な顔で、 「優飛が夕食をとったあと、どこかに消えちゃったの。夜は夜でトレーニングをしたいと思っていたのに…」 そう言ってさらに探し回ろうとしました。 そう言っていても埒があかないので、もし外出しているのならフロントを通っているわけだし、フロントに聞いてみようということになりました。 「ああ、2時間ほど前に、4人ほど外に出ていかれましたよ。男性の方が1名と、女性の方が3名です」 どうやら北見監督と花桜梨さん、涼ちゃん、そして優飛ちゃんの可能性が高くなっていました。 「その4名はどちらに行くと言いましたか?」 「特には何も言っておりませんでしたが。ただトレーニングウエア姿でしたので、どこかにトレーニングに行っていると思い、特に報告はしませんでしたが」 まさか! 私たち5人は外に出て4人を探すことになりました。 グラウンドには照明は灯っていません。 恐らく行くとすれば、あそこかも知れません。 私たちは息せき切って砂浜へと向かいました。 私たちが息せき切って砂浜に行くと、そこでは信じられない光景が繰り広げられていました。 花桜梨さんと涼ちゃんが砂まみれになりながらも必死にボールを取り合っています。 そして優飛ちゃんも全く何も気づかないかのように、一心不乱にラケットを振っていました。 「遅かったな、お前たち」 私たちに背中を向けたまま、北見監督がそう声をかけてきました。 私たちはビックリしました。 監督と副監督が、まさか砂浜でボールの奪い合いをしているとは思いませんでしたし、優飛ちゃんもコーチが来てからコーチに内緒でこんなことをしているなんてなかったと思います。 「花桜梨! 涼子! 優飛! とりあえず休憩にしよう!」 北見監督がそう声をかけて、3人はやっと動きを止めて北見監督の方に顔を向けました。 そして、やっと私たちに気がついた、という表情をしました。 「優飛! なんであんたはいつの間にこんなことを!」 美華コーチが優飛ちゃんの肩を揺すりながら大声をあげます。 優飛ちゃんは決して笑顔を絶やさずに、持っている紙にこう書いて見せました。 「一昨日から生理が始まって、その時は北見監督が練習メニューを軽くしてくれたんだけど、何だか不安になって、その日から夜の練習の許可をとってずっと砂浜で素振りの練習をしていたの」 「優飛から生理のことを喋らないように頼まれてたんだけど、だからこの件も喋るのを忘れてたんだ。責任は俺にもあるよ」 北見監督がそう言って優飛ちゃんの発言の補足をすると、美華コーチもやっとホッとした表情を見せました。 実の妹なので、凄く不安に感じたのかも知れませんね。 「明日以降もここで夜の練習をしたいけど、ダメかな?」 「いいわよ。でもこれからは私にちゃんと言うのよ。心配するから…」 美華コーチはそう言って、優飛ちゃんを抱きしめていました。 「で、君達は何のためにここに来たのかな?」 北見監督は私たちにそう声をかけました。 「フォーメーションをどうするのか、花桜梨さんや涼ちゃんに相談しようと思って…」 私がそう言うと、監督は苦笑いしながら、 「今の花桜梨と涼子に、そこまでの余裕があると思うか?」 そう言って2人の方を指差しました。 監督が指差した先では、花桜梨さんと涼ちゃんがやっとの思いでスポーツドリンクを飲んでいるところでした。 「念のために言っておくが、花桜梨も涼子も監督と副監督を任せているけど、建前上は選手でもあるんだよ。これがどういう意味を持っているか、君達には分からないかな?」 どういう意味、ですか? 「花桜梨も涼子もあまり口には出さないけど、最悪の場合は自分がフィールドに立つことも想定している。みんなの動きが悪かったら、自分がゲームに出てゲームをフィールドからコントロールしなければいけない、そう感じているんだ」 監督はそう言ってしばらく言葉を切った。 花桜梨さんも涼ちゃんも、早くもタオルを置いて、またトレーニングを始めてしまった。 「このチームで一番トレーニングをしているのは誰か。他ならぬ花桜梨と涼子なんだよね。普段ゲームに出ることのない監督と副監督が一番練習をしていて、レギュラーをはじめとした他の選手たちは何をしているんだろうね?」 北見監督が皮肉っぽく言い放ちました。 「フォーメーションはあとでも考えられるし、シーズンが始まってからでも修正はできる。今大切なのは、とにかく1年間動ける体力をつけることじゃないのかな? それが出来ていないのに、今からゲームのことを考えるのは早計なんじゃないかな?」 でも、北見監督の言っていることは間違っていません。 そうでした。今この時期に必要なのは、体力をつける、それが一番じゃないかなという気がしてきました。 そうですよね。ちゃんと動けるようにならないうちにフォーメーションとか考えても意味がないですよね。 「桜花杯が始まる前に、もう一度合宿を張ろうと思っている。そこで改めてフォーメーションのことは考える」 「また合宿ですか?」 「そう。今度は佐多舞で合宿を張る」 佐多舞… 昨年まであったROOMMATESの本拠地です。 「練習所とかはもとのROOMMATESの施設を借りようと思う。あれから赤のチームが練習場として買収したけど、でも取り決めでWoody BELL'Zが使う時には優先的に空けてくれる、という申し合わせになっていたから。それに練習相手に裏輪女子高校のメンバーも使えるしね」 北見監督、そこまで考えていたんですね。 「で、君達は何をしに来たの? まさかここでお喋りをしに来ただけかな?」 北見監督、すごく皮肉いっぱいです。 まるで、練習をしないと帰さないような言い方です。 そうなると私たちもやらないわけには行かないじゃない! 「分かりました!」 私たちはそう言うと、靴や靴下を脱いで、花桜梨さんや涼ちゃんがプレイしている中に入っていきました。 「これがWoody BELL'Zの伝統なんだよね。誰が言わなくても自分から時間を見つけて練習をしようとする、その心構えが今の強いチームを作り上げていったんだよね」 北見監督はそう言って、嬉しそうに私たちを見つめていました。 「変態チーム」だけでないWoody BELL'Zの強さの秘訣を垣間見た、そんな気がしました。 PR |
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