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2006 12,10 21:38 |
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八重です。引き続き話をします。
あの後、みんな押し黙ったままクラブハウスを出てホテルに戻りました。 その間、まるでお通夜のようにみんな何も喋りませんでした。 ホテルに着いた後、北見監督は真っ先にバスを降りました。 北見監督が降りた瞬間、まるで堰を切ったかのように、みんなの不満が一気に噴出しました。 一体何様だと思ってるのか。 同じ選手に大怪我をさせろなんて、それでも指導者の言う事か。 殴られた若菜ちゃんが可哀想。 みんながそう不満を言っている間、藤崎さんだけがなぜかあまり気にも止めないような表情でバスを降りました。 もちろん私は不満を言いませんでした。隣に座っていた恵壬も決して不満は言いませんでした。 でも言わないながらも、北見監督が何故あんな事を言ったのか、納得しかねるところはありました。 ホテルに戻った時、みんなは食事をしてから部屋に戻ろうという事で、直接レストランに入っていきました。
私はそんな気分になれなくて、ひとりで自分の部屋に戻りました。 部屋の前には北見監督が立っていました。 「監督、どうしたんですか?」 私はあくまでも穏やかに声をかけました。 「花桜梨、悪い。とにかく花桜梨と2人だけで話がしたい」 監督は思いつめた表情で私に言いました。 私も監督のその表情が気になって、監督を部屋に入れました。 次の瞬間、監督が私に抱きついてきました。 そして、その勢いのまま、私はベッドに押し倒されました。 私も監督のことが好きです。 バージンは監督に捧げたい、そう思っています。 そして監督との子どもを何人も作りたいな、なんて思っていました。 でも、 今の監督は、私の好きな監督ではありません。 涼ちゃんに大怪我をさせるような指示を出したかと思うと、抗議した若菜ちゃんを引っぱたく、そんな人だとは思いませんでした。 今の監督には、私の大事なものはあげられない! そう思ってとにかく監督を引き剥がそうとしました。 その時です。 私に抱きついてきた北見監督の様子がおかしい事に気がつきました。 そして… いつしか啜り泣くような音、そして嗚咽が聞こえてきました。 えっ!? 北見監督、泣いている? まさか、と思いました。 北見監督はいつも私たちのことを親身になって相談に載ってくれたり、私だけでなくいろんな女の子を可愛がってあげたり、他人への面倒見がいい人です。 そしてその表情には、揺るぎない自信があるように感じました。 でもその監督が、とにかく今は私の胸に縋って泣いていたのです。 私は、とにかく監督の頭を優しく撫でて、監督の気を落ち着かせようとしました。 やっと落ち着いた監督は、ベッドに私と並ぶように座り直してから、まずは私に謝りました。 そしてポツリポツリと話し始めました。 決して涼子のことを憎からずは思っていない。 個人的には涼子には代表に残れるように支えてあげたい。 でもそれをA代表のチーフが口を出す事は絶対に許されない。 だから心を鬼にしてああいう発言をしたのだと。 それはもちろん恵美についても同じだよ、そう監督は力なく笑いながら言いました。 若菜を殴った件も同じ。 決して若菜の意見は間違ってはいない。 少なくても、それをWoody BELL'Zの監督が言うべき事でないのは分かっていた。 でもA代表のチーフとしてはB代表の選手をそのままのさばらせるわけにはいけない。 だからあんな発言をしたんだ。 「Woody BELL'Zの監督としての立場なら、まず涼子に怪我をさせるような指示は絶対に出さないし、出せない。でも代表監督はある意味『戦争』をしているんだ。同じクラブチームに所属していても、敵である以上手心を加えてはいけない、それを若菜は気がつかなかったんだろうね」 何となく監督の気持ちが分かりました。 そして、監督はこう言いました。 「でもね、俺も結局甘い人間なんだよ」 どうして甘いんですか? 「今日発表のフォーメーションを聞いて、何か感じなかったか?」 監督に言われてしばらく考えましたが、そう言えば気がついた事があります。 「そう言えば明日のゲーム、Woody BELL'Zの選手を入れていませんでしたね」 そうでした。 4人いるWoody BELL'Zの選手は、結局外されました。 実績のない私たちが代表から落ちるのはほぼ確実でしょう。 でもそれでも監督はWoody BELL'Zの選手を出しませんでした。 「だから甘いんだよ、俺は」 監督はそう言って、このフォーメーションの真相を言いました。 このフォーメーションは、別に勝とうという意図はなく決めたものだ、と。 あの中で如何に自分が一生懸命、それこそ110%以上の力で頑張れるかを見たい、そう思っていたそうです。 そして恐らくこのゲームが怪我人も出る荒れた展開になる事も考えたそうです。 「俺は恐らくA代表の選手が涼子や恵美を削る事も考えた。ましてや主人監督と涼子があんな事になったから、尚のこと」 北見監督はそう言ってから、私に向き直って、 「そのフィールドに、君達を立たせたくなかった。少なくても君達だけでも無事に戻ってきて、最強チーム決定戦に臨めるようにしようと考えていた。薫監督のことを批判していたくせに、これじゃ俺も同じだよな」 監督はそこまで考えていてくれてたんですね。 「俺も今はとにかく明日のことだけを考える。だけど今花桜梨にだけは伝えておく。明日のゲームが終わったら、ある覚悟を俺はアントニオ監督に伝えるつもりでいる」 私の目からも涙が溢れ始めていました。 監督をそこまで追い詰めたのは、私たちの責任だ。 せめて最後だけは何としてでも勝ちたい、そう思うようになりました。 もちろんスターターが知奈になった以上、私はもう出られない事は分かっています。 でもベンチにいる中で自分にできる精一杯のことをしよう、そう心に決めました。 「それじゃ、私は食事にいきます。監督はさすがに今日はみんなと顔を合わせたくないでしょう」 私が笑顔で言うと、監督は素直に頷きました。 そう言えば、監督のことを結構お兄ちゃんみたいに感じる事が多かったから、こんな素直な「お兄ちゃん」も珍しいです。 「食事は軽く取りますから、後で恵壬と一緒に飲みながらいろんな話をしましょう」 私はそう言って、笑顔でベッドを離れました。 「それでは監督、監督の部屋で待っていて下さい。私、おつまみとか持って来ますから」 私がそう言うと、やっと監督も笑顔を見せました。 PR |
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