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2008 05,29 13:01 |
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「おはようございます」
葵がクラブハウスに顔を出した時、一瞬何人かの選手が怪訝そうな顔をした。 まあ当然と言えば当然だろう。Woody BELL'Zの練習にまさかこれから対戦するチームの選手が参加しようとは露にも思わないから。 でも今日は葵のための練習。 そして、葵が来るからにはWoody BELL'Zにも価値のある練習でないといけない、そう思っていました。 「今日の練習には、特にFCはばたきから波多野選手が参加することになった。経緯とかについては涼子の方から話があると思うけど、午前中とにかく仲良く練習をさせて欲しい」 北見監督の話に続いて、涼ちゃんから補足説明がありました。 「今日は特に事情があって葵が参加することになりました。葵は今ちょっとした悩みを抱えているんだけど、かつてWoody BELL'Zで一緒に戦った仲間として放っておけなくて練習に誘いました。もちろんチームにとってもためになるような練習にしたいと思いますので、午前中いっぱいみんなで有意義な練習になるようにしましょう」 次に葵から挨拶があります。 「お久しぶりの人も、始めましての人もいるのかな。波多野 葵です。まさかWoody BELL'Zの練習に参加させてもらえるとは思ってもみなかったんだけど、お互いにいい練習だったと言えるようにがんばります。宜しくお願いいたします」 葵、まだ引きずっているような感じですね。 「さて、軽くアップをしたあと、いつものようにミニゲームを行う。フォーメーションはいつも通り。で葵は俺の代わりにこいつを着てBチームに入ってくれ」 北見監督は指示をしたあと、葵に自分が着ていた0番のビブスを渡しました。 ミニゲームをする前にそれぞれのチームでミーティングをします。 私はAチームのミーティングに参加します。 キャプテンの涼ちゃんがミーティングを仕切ることになりますが、その涼ちゃんがいきなり、 「今日は本番と同じ形でやります。攻撃パターンも全て試してみましょう」 と言い出しました。 「葵がいるんだから、少しは隠してもいいんじゃないの?」 育美が反論を唱えます。 「波多野さんがいても、私はやってみる価値はあると思います」 これは苺ちゃんの意見です。 「波多野さんがいる前で隠しても、本番で失敗したら逆にショックが大きいと思うんです。それだったら今ここで試してみて、ダメならさらに突き詰めていけばいいんじゃないですか? 波多野さんがいるのは午前中だけな訳だし,それ以降で進化させて点につなげられたら、逆に向こうに戦術がばれていてもダメージは大きいと思うんです」 私も同じ意見でした。 そういう訳でAチームはいつも通りのプレーをすることになりました。 ちなみにあとで花桜梨さんに聞いたら、Bチームは守備を葵に任せたらしいです。 そしてミニゲームが始まりました。 葵のポジションは右CBです。北見監督はAチームの動きをチェックしながらの動きなのでどうしても効率的な動きになりますが(言い方を変えるとあまり動かない)葵は精力的に動くので,やはりプレー自体も真剣にならないとこちらの意図したプレーが出来なくなります。 今回は15分間流したあと,3分ブレイクを取ります。このブレイクの間に戦術の見直しやフォーメーションの修正を行うことになります。 Bチームでは葵が積極的に発言をしているようでした。そしてそれに対しみんなが真剣に聞きいっています。あのシオですら,納得がいく表情で葵の話を聞いています。 結局ミニゲームは6本やって2−0で勝ちましたけど,今までやったのより遥かに濃い練習になったような気がしました。 練習が終わったあと,私は葵と話をしました。 「どうだった? Woody BELL'Zに混じってやった感想は?」 「ホントにこれで良かったのかな? という感じだったです。一応あたしがFCはばたきでやってきたことをみんなには教えたつもりだけど,Woody BELL'Zには合うのかな? って」 「でもあのチームは今は仮想FCはばたきだったんだから,実際の動きを覚えられてためになったんじゃないかな、と思うけどね」 「そうかな? それならいいんだけど…」 しばらく私も葵もドリンクを飲みます。 「ところで、葵は今落ち込んでいるんだって? 二階堂さんから聞いた」 「そっか…」 「やはりこの前のゲームのことが原因,なのかな?」 「…まあ、ね」 「やっぱり,ネ。じゃあ、ちょっと待ってて」 私はやはりあの話をするしかないと思ったので,いったん話を切って,茜を連れて来た。 「あれっ、茜か?」 「葵ちゃん?」 「そう、葵ちゃんに,茜ちゃんの話をした方がいいかな,って」 「でもそれがどういう…」 「茜はね,この前のFCはばたき戦で決勝のオウンゴールを決めたんだよ」 「決勝の,って、あのゲームはうちが勝ったんじゃ」 「だから言ったじゃない。決勝の『オウンゴール』を決めた,って」 「オウンゴール?」 「この前のビデオを見せてもらったけど,葵はクリアミスを相手に決められた訳だけど,茜は自分が入れてはいけないゴールに入れてしまった。もっとショックは大きかったはずだよ」 葵も言われてみて、確かにそうだという表情をしました。 「茜は他にも、2点目の時も自分のせいだと責めていたし。ゲームが終わったあとはそれこそ大変だったんだよ。北見監督に『私を次のゲーム外して下さい』と泣きついたりして」 茜はその時のことを思い出して,顔が真っ赤になっていました。 「さてそこからの話は私は出来ないから,茜ちゃん,自分で話してね」 茜は顔が真っ赤になったまま,話を始めました。 「私、あの時もうどうしようもなくて,『次のゲーム外して下さい』と言ったんです。でも北見監督は『シオも野崎も出られない中でお前まで出られなくなったら守備陣が崩壊するからダメ』と言われて」 「シオも野崎も出られない?」 葵がビックリした表情で聞きました。 「うん、ボランチのシオはあのゲームで一発退場だったし,百合も警告貰って。で百合の場合は開幕戦でも警告貰っていたから,あのゲームの段階で警告2枚累積で次のゲームが出場停止になっていたわけ」 私が補足説明します。 「それで… やっぱりここからは話せないです!」 …仕方ないなぁ、誘導尋問か。 「茜,そのあと,北見監督に気持ち良くしてもらったんでしょ?」 茜の顔がこれ以上ないくらいに真っ赤になりました。そして首を縦に振ります。 「たっぷりと可愛がってもらって,嫌なことを忘れちゃったんでしょう?」 またも首を縦に振ります。 「まあ茜の場合は非常に不純な形でだけど,葵以上に辛い状況を何とか立ち直ることができた。葵はどうなのかな?」 私はそう葵に聞きました。 「…」 「それにね、葵はそういう悔しい思いを初めてしただろうけど…」 葵の表情に少しずつ力が宿っているように感じました。 「私たちはその悔しい思いを既に3度も味わっている。花桜梨さんに辛い思いをさせて申し訳ない,そういうゲームも2度している。それに比べれば、葵の悩みはまだまだ小さいんじゃないかな,と思うけど」 「そうか,そうだよな」 「それだけじゃない,うちは3度だけど,それ以上悔しい思いを味わっているチームだってある。それを考えれば,まだまだ幸せじゃないかな?」 だいぶ葵の表情が変わって来たような気がしました。 「これからもゲームは続くし,その中でクヨクヨした気持ちを引きずったまま次のゲームに臨んだら,チームメイトに申し訳ないよ。そのためには、既に起こったことはすっぱり忘れて,次頑張ろうと前向きになるのが大切だと思うけどね」 「そうだよね、ありがとう,佐野倉さん、茜」 「やっと立ち直れたかな?」 「うん、何とか次のゲーム頑張れそう」 「良かった。葵には立ち直ってもらわないとね」 「ホントにありがとう」 「いや,そういう意味じゃなくてさ,営業の方で『お帰り波多野寿司』という、葵ちゃんを歓迎する商品を作っていたからね。そこで葵が出てこないなんて言ったら,シャレにならないから」 「そっちもあったのか」 「まあね、前に葵が 『波多野葵お帰りなさいデー』やってよ なんてFCHブログに書くから営業も気を利かせてやってあげてるんだから」 「そっか… あ、でも弁当の呪い…」 「この前のEWIは弁当作られたけど勝ったよ。それで納得できない?」 「…」 「そんなことだから,やはり葵が元気じゃないとこっちも調子狂うからね」 「サンキュー」 「それじゃ今日はここまで。このあとFCはばたきの合宿に合流するんでしょ?」 「ああ」 「それじゃちゃんと二階堂さんに謝っておくこと。結構心配していたんだからね、二階堂さん」 「そうだね,あたし、つい二階堂さんに暴言吐いちゃったし。ちゃんと謝らないと,ね」 「それじゃ,頑張ってね」 「ああ、また土曜日な!」 …良かった。 やっぱり葵は元気な方がいいよ。 まあそれで土曜日のゲームまた大変なことになりそうだけどね。 …でもこっちだってリベンジをしなければいけない。 2年越しで勝ち星がない訳だから,とに各土曜日勝ち星をつけないと。 さ、頑張ろう! PR |
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