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2006 09,17 10:44 |
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おはようございます、八重 花桜梨です。
本当は昨日アップする予定でしたけど、どうやら疲れが出たみたいで、書いている途中に寝てしまいました。 なので改めて、書くことにしました。 昨夜は私はひとりで寝ていました。 ちょっと寂しいな、という感じがします。 まあ… でも約束ですから仕方ないかな、って私は割り切るしかないんですけどね。 さて、昨日のゲームのお話をする前に。 昨日のゲームの相手の小波蹴球団さんとはいろいろな因縁がありました。 特に最近はうちの熱烈なファンが蹴球団の高見詩織さんの言動に対して怒り、蹴球団さんのクラブハウスに侵入して高見さんのロッカーに毒物を置いてくるという事件があり、そのことで特に小波蹴球団さんはピリピリした雰囲気になっていました。 ちなみに未成年なので敢えて名前は伏せさせていただいていますが、容疑者として捉えられた者とうちのブログに「紐緒結奈」と書き込んだ者、そしてクラブハウス内に侵入した者は同一人物です。 実際に警察を通して小波蹴球団さんから提出してもらいました「見張りクンX」のシステム解除も、あっさりとやってのけていましたから。 ではなぜ情報戦で負けたか、といいますと… 「油断したわ。まさか私以上のやり手がいるとは思わなかったの。気がついていればこんなことはなかったのに!」 とのことでした。 恐らく普通以上の用心深さなハッキングの段階で気づいていたことでしょう。でも容疑者は自分がしたことレベルの高さに酔っていたようで、まさかそれ以上の存在が近くにいたことには気づかなかったようです。 岡野さんはあの歳にしてハッキング能力は突出した才能を持っています。 で個人情報が特定できたところで特製の「想い出くん」を飛ばして容疑者を空から監視していましたから。 もっともその岡野さんですら、個人情報を掴むまでに相当時間がかかっていましたから、容疑者のスキルの高さは確かに感じ取れました。 「ああいうヤツとサイバー戦をやり合ったら、結構面白い戦いになるかもしれないな」 岡野さんは帰り際、ナックの海老バーガーセットを食べながら、そう北見監督にいっていました。 さて閑話休題。 小波蹴球団さんからは、今回の件はゲームが終わってから主人監督と麻生キャプテン、九段下バイスキャプテンの3人に事情説明をして欲しいとのことでした。 そして当事者の高見メンタルアドバイザーや高見詩織さんは謝罪を受け入れそうにないとのことでした。 北見監督も恐らくそのような形になるだろう、と考えていたようで、小波蹴球団の主人監督に以下の通り連絡をしました。 ・ 事情説明はゲームが終わったあと17時からWoody BELL'Zの監督室で行う。 ・ 当方からは北見監督と、ROOMMATESの岡野さんの方の情報を報告するということで 私が出席する。 (ROOMMATESは兵庫のFCはなたき戦で、岡野さんもあの中で出場したようですので) そして今日は若菜さんの誕生日でもありました。 いつもならベンチに下がってみんなから勝利をプレゼントしてもらう、というのが基本的な流れなのですが、今日は敢えて北見監督は出場させました。しかもCFで。 何でもレイさんの調子が思っている以上に良くはないのですが、かといってマリをDFにコンバートしてしまい替えがいないので、それで若菜さんをテストする、という意図もあるようです。 もちろん若菜さんもCFができるということになると、レイさんものんびりとはしていられない、ということもあるのでしょうね。 ピッチに入った瞬間、一種異様な雰囲気にちょっと戸惑いを感じました。 お客さんは結構入っています。でもその沢山のお客さんから発せられるはずの歓声が、やけに小さく聞こえます。 しかもその歓声は、アウェーの小波蹴球団を応援する歓声でした。 Woody BELL'Zの選手たちに向けた声援は、全く聞こえません。 実は私たちは、それを知っていました。 ゲーム前のミーティングで、北見監督はこう私たちにいいました。 「今日のゲームだけど、うちのチームのメンバーがしたことではないけど、チームスタッフを語ったうちの『仲間』がした犯罪行為で信用を落としたことは確かだ。だから、俺の方から昨日、チームのサポーターのリーダーを通して以下の通り通達した」 北見監督はそういって、1枚のチラシをみんなに見せました。 「今回の小波蹴球団戦を前に、残念なことが起こりました。 私たちの『仲間』が、チームスタッフを名乗って小波蹴球団のクラブハウスに侵入し、毒物を置いてくるという犯罪を起こしてしまいました。 私たちにもいろいろと言い分はありますが、そのために他人の口を封じようとする行為に憤りを感じました。 しかし小波蹴球団にとっては、それがサポーターの所所業だとしても、あくまでも『Woody BELL'Z』全体の問題として捉えているようです。そして私たちチームスタッフも、そのことについては全く同感だと考えています。 私たちスタッフはたった1つの方法でしかこの汚名を濯げないと考えています。 それは、正々堂々と戦って勝つこと、それだけです。 私たちはそのために一生懸命頑張ります。 ですので、皆さんに以下のことをお願いしたいと思います。 ゲームが終わるまで、Woody BELL'Zへの応援は絶対にしないで下さい! Woody BELL'Zへのブーイングは構いません。いや、むしろいつも以上にダメ出しをして下さい! そして絶対に小波蹴球団に対しブーイングなどはしないで下さい! 小波蹴球団の健闘を称えて下さい。 私たちはゲームの中で真剣に戦って審判を出します。 勝ったらその時点で私たちの健闘を称えて下さい。 勝たなかったら、遠慮なくブーイングを浴びせて下さい。 私たちは自分のために、自分達のチームメイトのために、そして自分達を応援してくれる『仲間』たちの為に真剣に戦うことを誓います。」 このチラシに、監督の言いたいことの全てが詰まっている気がしました。 「俺から君たちへの要求はただ1つ。真剣に戦って勝つこと。それが、今日誕生日を迎える若菜へのプレゼントになると思うし」 北見監督の檄に。みんなが今まで以上に真剣に「はい!」と応えました。 誰も応援してくれないピッチに立つ、それが怖いことに感じた人も少なくないかもしれません。 でも、ここで戦って結果を出す、それが私たちの求められた唯一の方法です。 特にナツの代わりに左サイドバックに入る舞佳さんは重要なポジションになりそうです。 なにしろ小波蹴球団の高見さんは右ウイングです。恐らくかなりきついプレーも辞さないと思われる高見さんを上手く抑える必要もあります。 そういう意味では、経験の豊富な舞佳さんが入ったことが最善の策かもしれません。 ゲームがはじまると、まずは蹴球団が攻めに来ました。 でも「最強の盾」は決して慌てませんでした。舞佳さんが高見さんを、恵美が神嬢さんをしっかりと抑えて仕事をさせません。サイドバックのオーバーラップも、シオとセリがしっかりとケアしています。 そして… Woody BELL'Zの右サイドでクロスを上げようとしていた神条さんから、一瞬早く下がってきていた光ちゃんがボールを奪います。 前を見ると誰も右サイドにはいません。 光ちゃんはそう見て取ると、右サイドを一気にドリブル突破していきました。 さすがにセンターラインを過ぎたあたりから主人さんに追いつかれましたが、なお突破をやめません。 そして結局主人さんに身体を割り込まれ、中央にボールをクリアされました。 してやったりの表情の主人さん、逆にまずいな、という表情をした光ちゃん。 しかし次の瞬間、その表情は全く逆に変わりました。 何があったのか、次の瞬間分かりました。 確かに蹴球団の主人さんがクリアしました。それがこともあろうに中央で待っていた若菜の足元に納まったのです。 若菜はそのボールを一回トラップすると、ゴール左に浮いたシュートを打ちました。 そのボールは、一瞬ゴール枠を外れるかと思いましたが、しっかりとネットを揺らし、そのまま下に落ちました。 その瞬間も、一種異様な雰囲気でした。 いつもならゴールの瞬間、スタジアムを揺るがす大声援が起こります。 私たちもその大歓声の中で、喜びを爆発させていました。 しかし今日は応援禁止が通達されています。 スタンドのサポーターも、恐らく喜びを爆発させたかったと思うのです。 でも「応援するな」の通達。みんな喜びを爆発させたいんだけど… そんな思いをかみ殺して私たちを見つめているのが分かりました。 ピッチでは若菜を中心に静かに喜びを分かち合う輪ができていました。 そういえば… 若菜にとってバースデーゴールとなった今日のゴール、記念杯では初ゴールなんでしたよね。 まさに今日の若菜は、初物尽くしの日になったようでした。 そのあと、蹴球団もシュートを浴びせるようになってきました。 もっとも私たちはそれをみすみすゴールを許すような守備をしません。 少なくても神条さん、高見さんの動きを恵美と舞佳さんが抑えているので、伊集院さんにいい形でボールを渡さないプレーができている、それが大きかったと思います。 そして30分、こっちが追加点を奪います。 蹴球団のゴール前からのこぼれ球がシオのところに入りました。 シオはそれをポーンと右サイドに張っている光ちゃんに飛ばします。 光ちゃんが主人さんと競り合いながらボールを頭で中央に折り返します。 そこに飛び込んでいた涼ちゃんがボレーでゴール左に叩き込みました。 涼ちゃんの初ゴールでした。 今度は涼ちゃんのまわりにみんなが集まります。 みんなも涼ちゃんの苦悩を知っていました。だからこそ、初ゴールをことのほか喜んでいました。 それでもまだ気を引き締める必要があります。 まだゲームは終わっていませんから。 実際危ない場面もありました。 前半で唯一といってもいいかもしれません。 高見さんが左サイドからクロスを飛ばしてきました。 対していた舞佳さんもさすがに間に合いませんでした。 そして伊集院さんが頭でシュートを浴びせてしまいます。 私も一瞬やられたと思いました。 でも、ボールは幸運にもバーを直撃し、詰めていたマリがクリアしました。 「ホラホラ、こういうことがあるから気を引き締めないと!」 私は守備陣のみんなにそう檄を飛ばしました。 終了間際、中央の若菜さんからのスルーパスをシオがループシュートを決めて差を3点に広げたところで前半は終了しました。 若菜さんはアシストも初めて、でした。 ハーフタイムでは監督から、差を考えずにまだまだ攻めるように指示をされました。 サッカーはちょっとした油断から一気にバタバタ点を取られることも多いスポーツです。敢えて攻めにこだわった監督の姿勢は共感できました。 その指示通り、とにかく後半はじめは徹底的に攻めに出ました。 ヒナのダイビングヘッドも、結果的には惜しかったけど、いい形での攻めができていると感じました。 でも何となく攻め疲れが出てきたようでした。次第にシュートを打たなくなり、中盤でボールを回すことが多くなりました。 そして… 残り10分で蹴球団は究極の4トップにしてきました。 84分、CFの赤井さんがボールを左サイドの高見さん〜実は後半始まって間もなくして、高見さんは舞佳さんのプレスが激しくいい仕事がしていなかったとのことで、右から左に配置転換していました〜に渡し、それをダイレクトでクロスを上げます。 その時、誰もボールの先の動きを見ていませんでした。 舞佳さんのさらに外側から高見さんの代わりに右ウイングに入っていた和泉さんがダイビングをしているのが見えました。 そしてシュート。 私の手の先を飛び、ゴールの左サイドのネットを揺らしました。 その瞬間、それまで黙っていた観客席から、飛び切り大きなブーイングが飛びました。 でも結局その1失点で審判の笛が鳴りました。 その瞬間、今まで感情を押し殺していたサポーターが、本当に嬉しそうに応援をはじめました。 何ともいえない感じでした。 今まで応援されるのを当たり前のように感じていましたけど、今日こうやって応援のない中でプレイをしていて、応援されることの大切さに気がついた気がしました。 そして… 「Happy Birthday, to you! Happy Birthday, to you! Happy Birthday, dear Wakana! Happy Birthday, to you!」 サポーターのみんながゲーム前に伝えたかった歌が、ここでスタジアムに大きく響き渡りました。 その声に応えるように、若菜さんが手を振ります。 そのあと小波蹴球団の主人監督に事情説明があったのちにミーティングをしたのですが、やはりミーティングトいうよりは誕生パーティーのノリ、ですね。 ミーティングも始まっていないのにケーキが運び込まれているし。 とりあえず若菜の誕生日をみんなで歌で祝ってから、ケーキを口にしてのミーティングとなりました。 今日の攻撃陣は理想的な形でした。ただ後半失速したので、そこを上手くできるように、との話。 守備陣は終了近くの失点が余計、と言われました。 そしてその場で次のFCはばたき戦のオーダーを発表します。 GK 八重 花桜梨 DF 橘 恵美 鞠川 奈津江 藤沢 夏海 MF 九段下 舞佳 神条 芹華 藤崎 詩織 朝日奈 夕子 FW 野咲 すみれ 神戸 留美 伊集院 レイ 「私は次は出ないんですか?」 涼子がちょっと不満そうに聞きます。見ると若菜も心配そうです。 「うん、涼子と若菜は次のFCはばたき戦では出さない」 好調な選手は変えない、それが鉄則だと思うのですが、それでも変えてきました。 「すでに君たちは俺の構想に入っている。第6戦・ROOMMATES戦の、ね。ポジションは今日と同じ。でその前に怪我とかで出られないということがないように、敢えて下げることにした。それで不満かい?」 涼ちゃんも若菜もやっと笑顔を見せました。 分かっているんです。 2人とも他のチーム以上に、ROOMMATES戦には強い想いがあることを。 かつてROOMMATESの主将だった涼ちゃんと、度重なる失態からROOMMATESを追われた形になった若菜さんと。 Woody BELL'Zの選手として、ROOMMATESに恩返ししたい気持ちも。 そしてミーティングを終えて、あとは無礼講となります。 主役の若菜さんは、みんなから話しかけられていました。 何だか嬉しそうな表情です。 その若菜さんが、私のところに来ました。 「花桜梨さん、ゴメンなさい。私…」 若菜さんが謝ってきたので、私は気にしていないよ、という表情をしながら、 「若菜さんにとって今日最大の『初めて』だね。あまり心配しないで、監督との一夜を楽しもうと思うと気が楽になると思うよ」 「でも…」 結構若菜さん、私に気を使い過ぎているようです。 「ホラ、くよくよしない。それに… シオにも聞いたけど、監督はちゃんと教えてくれるから、怖がらずに監督についていけばいいから。ちゃんと監督の感触を楽しんでくるんだよ!」 私はそう言って監督のところに若菜さんを引っ張っていきました。 だから、昨夜はちょっと悶々とした夜を送りました。 練習が終わったら、若菜さんに昨日のこと、ちゃんと聞いておきます。 PR |
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