こんばんは、北見です。
　今日は3-4-3スタイルで練習をさせていました。

　　　　　　　　　　　　　９９綾　崎
　　　１９神　戸　　　　　　　　　　　　　　　７　陽ノ下

　　　　　　　２２野　咲　　　　　　　１４和泉穂

　　　　　　　　６　神　条　　　　　９　九段下

　　　４　一文字　　　　　２　鞠　川　　　　　２３橘恵美

　　　　　　　　　　　　　２１パット

　しかしやっぱりパッとしません。
　やはり今の状況だと、それなりに攻撃が機能しても、守備で点を取られてしまいます。
　特に自身喪失をしているパットがＧＫだからなおのこと。

　練習が終わったあと、監督室に戻ろうとしている私を呼び止める声がしました。

「監督、お話があります」
　呼び止めたのは花桜梨でした。
「どうした、花桜梨？」
「監督にお願いがあって来ました」
　花桜梨の表情は真剣そのものでした。
　少なくてもベッドで一緒に寝ている時の、猫のように甘えた表情は全く感じられません。

「まあ一杯どうだ？」
　監督室に入った俺は、花桜梨をソファに座らせると、とりあえずコーヒーを煎れた。
　幼馴染みだからこそ、花桜梨の好みも知っている。
　俺がコーヒーを持ってくると、花桜梨は嬉しそうな表情を浮かべてコーヒーを飲みます。
「相変わらずだけど、監督の煎れたコーヒー、美味しいね」
　花桜梨が嬉しそうに感想を言います。
「俺は花桜梨の好きな煎れ方でやっているだけだよ」
「それもそうだけど、監督の煎れたコーヒーって、愛情がこもってるんだよね」
「変なことを言わないの！」
「は〜い♪」
　結構プライベートではこんな調子もあったりする。
　でも花桜梨はコーヒーを飲み干すと、すぐにさっきの真剣な表情に戻った。

「監督、私を最終戦に出して下さい」

　予想通りだった。
　花桜梨は３戦休むように申し渡したが、代わりに投入したパットがＲＯＯＭＭＡＴＥＳ戦で４失点して自信を喪失してしまった。
　陰で花桜梨がなんとか自信を取り戻させようと暗躍していたようだが、逆にパットはさらに自信を喪失してしまい、今日の練習試合でもミスキャッチを繰り返して失点を重ねていた。
　かといって琴子はチームの輪を乱すような言動を繰り返し、チームメイトの信頼を失っているのは明白だった。だから最終戦に出そうという気持ちには全くなれなかった。
　つまり、最終戦に出すＧＫがいなくなってしまった、ということなのだ。
　俺はパットを引き続き出す意向でいた。でもパットがあのようなザマじゃ、最終戦に出せるもんじゃない。
　かくして花桜梨の出場志願となった次第であろう。

「花桜梨、１つだけ聞く」
　俺は花桜梨に話しかけた。
「はい」
「絶対勝てるんだな」
　俺の問いに花桜梨は暫く考え込んだ。
　自分の中でシミュレーションしていたのだろう。
「勝ちます」
　しばらくして、花桜梨が自信を持って答えた。

「分かった、花桜梨、お前が最終ゲームのゴールマウスを守れ」
「はい！」
　花桜梨が嬉しそうに答えた。

　実は３戦休ませて花桜梨の総合ランクをキープしておき、他のＧＫのアベレージが下がるのを待つ意向だったが、花桜梨がそこまで言うのなら、少しは考えないといけない。
　とにかく最終戦のイレブン・ウィナーズ戦、無失点に抑えて勝ちたいものである。